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季節は巡る。
頭上からは、ひらひらと薄紅の花弁が舞い散っていた。
ふわりと落ちてきたそれを掌で受け止め、そっと握り締める。
「また、間に合わなかったな……」
ポツリと呟くとともに、頬を一筋の涙が伝った。
いつ、この想いから解放されるのか――と。
10回目を迎えたとき、果てなく続く絶望にもう数えることをやめてしまったから、 もう何度繰り返されているのかも判らない。
ただひとつだけ――誰も救うことのできない孤独を抱え、後悔の念を背負いながら生きていかなくてはいけない事だけは、はっきりと判っていた。
どっしりと佇む桜だけが、むせび泣く男を慰めるように可憐な花弁を散らせた。
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