第二章 【胡蝶の夢】

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 季節は巡る。  頭上からは、ひらひらと薄紅の花弁が舞い散っていた。  ふわりと落ちてきたそれを掌で受け止め、そっと握り締める。 「また、間に合わなかったな……」  ポツリと呟くとともに、頬を一筋の涙が伝った。  いつ、この想いから解放されるのか――と。  10回目を迎えたとき、果てなく続く絶望にもう数えることをやめてしまったから、 もう何度繰り返されているのかも判らない。  ただひとつだけ――誰も救うことのできない孤独を抱え、後悔の念を背負いながら生きていかなくてはいけない事だけは、はっきりと判っていた。  どっしりと佇む桜だけが、むせび泣く男を慰めるように可憐な花弁を散らせた。 .
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