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◇◆◇◆◇
「――っ、」
飛び起きて、己の呼吸の荒さに驚いた。
額を拭えばじっとりと汗が滲んでいて、それは顔だけでなく背中にまで流れていた。
季節は、春の訪れを間近に控えた3月。
寝苦しい夜とはまだ無縁の季節。
なのに、呼吸は苦しいし、汗ばんだスウェットが気持ち悪い。
「なんだよ、今の……」
カーテンの隙間から覗く空は真っ暗で、 まだ夜明けには程遠い時間なのだと悟る。
流れる汗が気持ち悪い。タオルが手近にないことに舌打ちをしながら、汰一は数枚のティッシュを引き抜いて額を乱暴に拭った。
ふと、頬までも汗に塗れている事に気付く。
おぼろげにしか覚えていないが、そんなにうなされるような夢だったろうか。ティッシュでは埒が明かない、と渋々ベッドから這い出て学校用のスポーツバッグを取りに行く。
たしか、まだ使っていないタオルを押しこんだ覚えがある。1階の洗面所まで取りに行くよりも、たとえ放置しっぱなしでも手近なそっちを使いたい。
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