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住み慣れた自室とはいえ、こう真っ暗では何がどこにあるのかわかりもしない。手探りでライトのリモコンを見つけ、立ち上がって点けた。
「えっ」
パッと部屋が明るくなり、目の前にあった鏡に自分の顔が映った。
大きく目を見開き、汰一はそこに映る自分の顔に驚いた。
手の感触通り、額には汗が滲んでいた。でも、それよりも、頬を流れる自分の涙に息が詰まってしまった。
既に脳は覚醒していて、寝ぼけてなどいない。はっきりと今の自身の状況はわかっているつもりだ。
夢見が悪くて、うなされて異常な程の汗を掻いた――ただ、それだけだ。なのに、この涙は何だ。食い入るように鏡の中の自分の顔を見れば、ぼろぼろととめどなく涙は流れ続けている。
「わ、なん、何だこれっ」
瞼を押さえてみても、止まる気配はない。目の奥が熱くてたまらない。
ひっと喉が引き攣る。嗚咽を漏らしそうになって、慌てて口を両手で押さえるが、今度はぐらりと脳内が揺れて嘔吐感がこみ上げてくる。
このまま涙が枯れるまで泣き続けるしかないのか――どんよりと重く真っ暗な孤独感がにじり寄り、汰一は身体が望むまま涙を零し続けた。
わけもわからず声を上げ、ただ子どものように泣いた。
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