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――生まれた時から、どうしようもない孤独感を抱いて生きてきた。
親や友人がいない訳ではない。むしろ、恵まれている方だとは思う。
両親ともに健在だし友達はいい奴らばかりだし、幸いいじめに遭ったこともない。
ただ、強い孤独感が背後からひたりひたりと汰一を追い詰めていた。
友人との付き合いでそれを埋めることはできなかったし、彼女が出来ても変わることはなかった。
寂しい。
漠然とした気持ちが、生まれたその瞬間から汰一を包み、まもなく16を迎えようとするこの歳まで苛んできた。
「……逢いたかった」
横断歩道を渡りながら、何気なく視界に写した歩道橋。
そこに、ずっとずっと、どのくらいかもわからない程ずっと前から求めていた人の姿があった。
ゆっくりと歩いていく身長の低いその人を長身の汰一の脚が逃すはずもなく、距離はあと僅か――手を伸ばすだけだ。
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