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はは、と渇いた笑いを漏らしながら汰一は老婦を見上げた。
腰は曲がってしまっているが、つるりとした頬は遠目で見た時よりもずっと若く見えた。
「……あんまり堂々としていたから喧嘩とか慣れているのだと思ったわ」
「そんな事。必死だったんですよ。必死過ぎて、何言ったかもあまり覚えてないです」
頼りなく眉尻を下げて笑う汰一に老婦は笑い声を隠さなかった。
大河ドラマの武士みたいですごくかっこよかったわよ、と立ち上がろうとしない汰一に手を伸ばして。
沢山の皺はあるが、やはりつるりとした頬同様、老婦の手はすべらかで気持ちが良い――などとぼんやり思いながら伸ばされた手を掴んだ。
「あら。伸ばした意味、なかったわねえ。そうね、おばあちゃんの手なんて触りたくないわよね、ごめんなさいね……」
同じ年の少年達に比べると頭ひとつ近く大きい身長の汰一が背の低い……それも、細く歳を取った女性の力を借りて起き上がるわけにもいかず、ただ手を掴んだだけにしておいたのだが、老婦は申し訳なさそうに首を傾げた。
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