うんざりする存在

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 叫びたかった筈だけど、ひゅうと微かな甲高い声を出しただけ。  畳に押し倒されたオレは体にのしかかってきたそれを退けようと左脚を上げた――服の下を何かが走っていった。  ゴキブリ? 「!?」  その間に臭いどろどろしたやつが喉まで入ってきて、オレの体は拒絶反応で跳ねる。 「……!! ……!」  自分が目を開けてるのかさえわからない。びくん、びくんと震え続ける体がわさわさと何かに覆われていくのだけは、わかった。  幸い気が遠くなりかけた瞬間、急に首がちくっとして意識が戻る。  今度は右腕がちくっとした。  痛え。  何かにかじられたみたいだ。  ……かじられた?  やがてこのちっちゃな痛みは、体のあちこちに拡がっていき。  黒いヤツが、オレの鼻に喰らいついた。 了
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