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「おまえ今何て言った――?」
僕は驚いて芦屋の胸ぐらをつかんだ。
「だぁー!うぜえ!」
「――痛てててっ!」
空手の有段者でもある完全無欠の男が
本気で僕の腕をひねりあげる。
「んなことマンションの住人の半分は気づいてるつーの!」
シャツの襟元を直してめんどくさそうに首をふる。
「――え?そうなのか」
まさに寝耳に水とはこの事だ。
「いいか?あの年で家賃ン十万の高級マンションの最上階に独り暮らし。バッグはいつもエルメスで服はヴァレンチノ。それにあの色気、見るからに只者じゃないでしょう?」
言われても――。
大人の事情に疎い僕にはさっぱりだ。
「つーか、気づいてなかったおまえがすげえわ」
芦屋は呆れ顔で溜息をついて言った。
「てっきり知ってて好きになったのかと思ってたよ――」
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