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「田辺?」
遼平が少し驚いた顔で佳奈美を見つめる。
何故なら、いるのが3号館メンバーだけになり、態度が変わり始めた亜矢に佳奈美が声をかけたのは、実はこの時が初めてだったのだ。
まだ全員で亜矢を元気付けようと声をかけていた時。
皆は心配そうに亜矢の周りを囲む様に集まっていたのだが、ただ一人佳奈美だけは、それを反対側のソファーに座ったままあまり興味なさげに見ていただけだった。
亜矢と一番仲が良かったはずの佳奈美のその態度に、少しだけ苛立ちをおぼえた者もいたが、これ以上場を乱すわけにもいかない、とグッと堪えていた。
そして、そのまま一言も声をかけず、せいぜい皆が亜矢から離れてから、その空いた亜矢の隣に移動した位の行動しかとっていなかった佳奈美が、このタイミングでやっと動きを見せたのだ。
『………………』
全員が固唾を呑んで、佳奈美が次に発する言葉を待つ。
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