第十二話 DUEL!DUEL!DUEL!

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パチパチパチ。長谷川の柏手連打に合わせ他の人も手を打ち鳴らし、いくつもの音も重なる。柏手多重奏。 あれ、これもしかして拍手なんじゃね。 俺と目を合わせたままの長谷川は拍手を止めると、1.5回くらいの咳払いをした。 「なんか、eゲームの大会みたいで凄かった」 〈決戦場〉で時折勃発するギルド単位の戦争や〈闘技場〉でのチーム戦のランクマッチならともかく、一介のMMORPGに過ぎない〈IAO〉のフリーな〈決闘〉は、とても競技として練磨されるような類のものではない。ゲーム内でも単なるレクリエーションの一つでしかなく、ろくなバランス調整もされていないからだ。 そんなことを言って謙遜する場面ではないと、俺にもなんとなく分かった。 これはきっと、長谷川からの握手だ。別に「俺達今日からダチ公だぜ!」って意味ではない。テニスで試合をした後のような、仕事相手の同僚と挨拶をする時のような、そんな握手に代わるような会話なのだろう。 ならば、当たり障りのない無難な返しが大正解だ。きっとそれが、同じクラスだけど特に仲良くもしたくない、かといって喧嘩なんてもっとしたくない程度の関係、俺と長谷川には大切なことなのだ。 「おう、ありがとう。悪いな、せっかくの打ち上げなのにこんなことしてて」 「別にいいだろ。盛り上がってるみたいだしな」 俺と長谷川は普通に会話をした。それがきっと、大切なことなのだ。 ようし、あとは任せたムードメーカー。
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