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俺は今人生最大のピンチに陥っていた。
『ガルルル・・・・・・』
目の前には威嚇してくる巨大な狼。
殺気が肌に伝わり、体が震えてくる。
ここは俺の知らない場所。
出口も見えない森の中。
こんな場所で人生を終えるのかと、どこか冷静な自分がいた。
『ガウッ!!』
短い声を上げ、さっきまで俺と見つめあっていた狼は地面を駆けた。
自慢でもなんでもないが、俺は走るのが速くない。
遅いわけでもないが、高校1年生の平均と言っていい速さだ。
対して、狼は5~6メートルの距離を一瞬で詰めてくる。
こうしている間にも・・・・・・
狼は目の前に。
『ガウッ!!』
先ほどと同じ、力を入れるように声を出した後、地面を蹴った。
俺に飛び掛かってくる。
キラリと光って見えたのは、口の中に生えた鋭い牙。
その攻撃を避けるため、震えていた体を無理矢理動かし、横方向に跳ぶ。
無理な体勢で跳んだため、着地に失敗し、ごろごろと地面を転がる。
既に額は汗で濡れ、服は土で汚れてしまった。
どうして狼に出会うことになったのか。
どうしてこんな場所にいるのか。
全ては1時間前に遡る・・・・・・。
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