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自分が消えていく瞬間に、恐怖などなかった
とうとう自分の番が来たのだと、透けていく手のひらを見つめながら、ゆっくりと目を閉じる
長年生きてきて、死んでいく物達を沢山見てきた
まだ生きたいって、もがきながら手を伸ばす
みんな未練を残しながら、消えていく
みんな涙を流しながら、消えていく
だけど、私はそんな事はしないから、しないからせめて最期ぐらいあの人の姿を見たい
なんて、誰もいない縁側はもう十年も前から主人が不在だった
「…私も今からそちらに行きますから」
本当にあの人の本に行けるかどうかわからないが、思い出の縁側に寝転び、あの人と過ごした日々を思い出してみる
だけど、私の体に異変が起きた
「えっ、ちょっと!何ですか!」
体がものすごい力で引っ張られて行き、
「嘘、でしょ……」
私の体が、居間の押し入れの中にあった一冊の本の中に閉じ込められた……
……本の中に閉じこめられ、十年の月日がたった
封印されている私は、空腹や孤独感、また寂しさなんて感じない
なぜなら、私は妖怪だから
それも、特殊な……
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