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遂にその日は訪れた。
何日も前から奉りの祭壇は磨き上げられ清められていた。
八雲と流星は連れ立って祭壇へと赴く。
「おぅ八雲。
性懲りもなく来やがったのか。
今年もお前には一本たりとも無理だろうよ。
この腰抜けが。」
隣家の都留丸(つるまる)が、おろしたての白褌を得意気になびかせながら吐き捨てる。
「貴様にだけは負けんぞ。つる。
俺は以前の俺ではない。俺の名を言ってみろ。」
都留丸は訝しげに眉間を歪めると、八雲に睨みを利かせる。
「何様だ貴様。八雲なんて名が珍しいとでも言うのか。」
八雲はフフンと鼻を鳴らすと、高らかに告げた。
「八雲とは、天より出ずる神が認めた由緒ある名よ。
見ていろ。目にもの見せてくれる。」
負けじと言い放ち立ち去る八雲と慌ててそれを追う流星の背中に、都留丸は呆気に取られながらも砲口を上げる。
「何が変わったのか全くわからんが
貴様の泣きっ面は変わらんぞ!負け犬めが!」
都留丸の最もな言葉にも耳を貸さない八雲の凛とした横顔を、流星は不安げに見つめていた。
果たして
無情にも奉りの時は目前に迫っていた。
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