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「やりおったな八雲。
貴様はわしを超えた。
最速の漢の称号は貴様の物よ。」
朦朧とする意識を、低い声が呼び覚ます。
精魂尽き果てて横たわる八雲を、禿盛や流星、都留丸達、そして大勢の観衆が心配げに取り囲んでいた。
「絵夢字(えむじ)開脚とはな…
あの伝説の技は命を落としかねん荒技。
このわしとて封印しておったというに。
御神体を見ずして成し遂げるとはのぅ…」
「お…親父どのっ
それでは流星と!?」
既に背中を見せて立ち去ろうとする禿盛に、やっとの思いで半身を起こした八雲が叫ぶ。
「長い事待たせたんじゃ。
流星にちゃあんと聞いてからにせぃ。」
正午過ぎの日差しが、新たなる最速の漢の頭皮に反射して美しく光る。
大勢の歓喜の声が上がる中、八雲は流星の手を握った。
「お流、いや流星。
俺の禿を一生磨いてくれるか?」
流星は頬を赤らめて大きく頷くと、にこやかに告げた。
「わたすが来年やっくんの記録を抜いたら鵺♪鵜腐腐♪」
漢(完)
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