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「健太君!早く起きなさい!」
安堵し強気になった洋子は、健太の両肩を掴み、強引に体を起こす。
「…ん」
健太は体を起こされ、閉じていた両目を開いた。
全身の痛みに泣き叫びそうになったが、視線の先に居る洋子を、そのぼやけた視界に捉え、健太は歯を食いしばった。
食いしばらなければ声が出てきてしまいそうになったのだ。
また泣き声を上げれば、洋子に叱られるだろう。
健太は幼いながらにそれを理解していた。
「…今の事、誰にも言っちゃだめだからね!分かった?!」
「…はい」
健太は小刻みに震えながら頷いた。
「後で、誰にも言わないって約束ノートに書いときなさい!分かった!?」
「…はい」
洋子は健太の答えを聞き、周りにいる子供達を睨み付けた。
「あなた達も言っちゃだめだからね!分かった!?」
「…はい」
子供達は怯えた様子で何度も頷いた。
子供達の返事を聞き、洋子は部屋から足早に出て行く。
残された子供達だけが居る部屋は、静寂に包まれる。
健太は現実を忘れるように、必死に目を閉じ、自分の体を抱え、震えながら涙を堪えた。
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