4584人が本棚に入れています
本棚に追加
零士は子供らしからぬ、何の感情も抱かない顔で、踏み付けていた蟻達が運んでいた蝶をつまみ上げ、健太の方へと投げ付けた。
健太は歪ませたその瞳に涙を浮かべ、必死に蝶を避けた。
そして危なげに立ち上がると、零士の元から逃げ出した。
しかし零士は執拗に健太を追い続ける。
健太は呼吸を忘れる程、無我夢中で走った。
しかし、とうとう、零士の手が健太の肩を捕らえた。
健太は堪らずに振り返る。
零士の顔はにこやかに笑っていた。
そして笑顔を浮かべ、右手に持っているハンマーを健太の頭目掛けて降り下ろした。
「ぐちゅ!」
健太の頭の中で、この嫌な音が鳴り響いた。
篠原健太は汗だくで目を覚ました。
また例の夢を見てしまったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!