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健太はへその緒が付いたまま、ダンボールに捨てられていた。
親の顔さえ知らない。
そして市長に『篠原健太』という名前を付けられ、太陽園という孤児達を預かる施設に預けられる。
幼い頃の健太は暇さえあれば地面を観察していた。
特に蟻の行列を見るのが好きだった。
蟻達を見る健太の横にはいつも、三歳年上の同じ施設で育つ麻生零士が居た。
健太は笑顔で蟻を見ていたが、零士は冷めた目付きをして蟻を見ていた。
健太には零士の笑顔を見た記憶がない。
零士は健太以外の子供達とは一切遊ばず、いつも口を開かぬまま、健太の側に居た。
幼いながらに健太は零士に他の子とは違う違和感を感じていた。
しかしあの日までは、その違和感をまるで気にしていなかった。
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