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ー 神威 シン 視点 ー
「ほれ。休むにはまだ早かろう。」
オレの後方、この部屋の唯一の出入口であるポータルドライブの辺りから聞こえる源流斎のしゃがれた声。
あのくそ爺いが使っている修練場と言われて連れて来られた部屋でオレは連戦し続けていた。
「ハァハァ……くっ。うっせえ…。」
あまりの難易度の高さに、冷たい地面に膝を着いていたが、源流斎の言葉で両手の剣を地面に突き刺して立ち上がる。
だいたいなんだよこの部屋は…。
出てくるモンスターが自分よりも高レベル。
しかも、一体一体がボス並みに強いとか、どうやったらそんな仕様に出来るんだ?
「ほれ。次が来るぞ。」
この部屋も、オレが居た檻の部屋のように僅かな窓から光が射し込むだけだ。
その一角に、巨大な黒色の蠍のモンスターが出現する。
人間…?
ただのデカい蠍じゃない。
頭部は人間の男の上半身で、胴体が蠍という今まで見た事のないモンスターだ。
人間の方の手には槍が握られている。
「其奴は毒に気を付けろ。刺されれば儂でさえ、抗えぬ。」
出現した際の光が完全に消え去ると、地面に突き刺さった巨大な蠍の脚が高速で動き出す。
「ちぃっ!」
オレは横っ飛びで蠍の猛突進を回避する。
地面を揺るがし、通り過ぎる黒色の影。
その間際、そいつの硬い装甲で覆われた尾が飛び出した。
薙ぎ払われる尾がオレに到達する瞬間、白波を使い、火花を散らせ力を逃がしながら、その尾を踏み台に無理な態勢から僅かに上へと身体を逸らす。
オレが尾の攻撃範囲から僅かに上へ行った事により、自分の下をそのまま、黒色の尾が通り過ぎる。
そして、地面に手を着き着地すると、爆発的な加速で背中を向けている人間の上半身に構えた古徹で、突きを繰り出した。
その瞬間、甲高い音が部屋に響く。
こいつっ…厄介な反応速度だな…。
器用な事に槍の中心部でオレの突きを受け止め、弾き返したのだ。
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