俺達の禿げキュン伝説

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「広樹広樹広樹! 発見、大発見!!」 隆がいきなり奇声を発し、ぐったり寝そべる俺の耳許に寄って来た。 「寄るなぃや、暑い! って、元気じゃのぅ、お前」 山口県立周陽工業高校の、俺達『ミステリー研究会』は、夏休みだというのに昨日今日と特別授業だ。 インターンシップ。 進路指導の一環として授業に組み込まれている、いわば職業体験実習。 近場の事業所や会社、個人店舗などに学校が頼み込み、二日間ほど生徒を放り込んで働かせてもらい、社会人のイロハを学ばせよう、ってやつである。 ミステリ研、すなわち俺と隆、林の三人は、特に示し合わせた訳ではないが、 偶然三人とも町役場での実習に決まった。 ……ま、三人が三人ともラクそうな室内の事務仕事を選んだ結果、 無事ゲットした楽勝の実習先だった、はずなのに。 なんでヘルメットかぶってこの炎天下、路上でドカタ作業しなきゃならんのだ。 冷房効いた役場の中で、 書類整理したりとか、 町民の相談受けたりとか、 そんなんじゃないのか、役場の仕事ってのは! 想定外の肉体労働に、普段ちんたら高校生活を送っている、工高唯一バリバリ文化系クラブの俺達は、すでにバテバテだ。 ようやく迎えた休憩時間、俺達は休憩用テントになだれ込み、滝のような汗を拭う余裕すらなく、トドのように寝っころがっているのである。 「で隆、今度の大発見は何なん?」 幼稚園以来の腐れ縁にしてミステリ研部長に敬意を表し、青息吐息に鞭打って、一応尋ねてやる優しい俺。 隆は脱いだばかりのヘルメットを振り回さんばかりの、興奮した口調で答えた。 「あのオバちゃん、後ろ頭にすっげーハゲがある!」
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