俺達の禿げキュン伝説

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かずさんが目を丸くして俺達を見る。 いや、さっき正々堂々と晒した上に、俺達の目の前でイジってたじゃないか。 とは言えない。 「コレのことじゃろ、円形脱毛症、って」 かずさんは、さっきの五百円ハゲに再び触れながら、クスクス笑った。 え、そこで笑うの? 「そうか、円形脱毛症に見えるんかぁ、コレ。 周りはみんな顛末を知っちょるけぇ、見ても呆れた顔しかせんけど」 「……円形脱毛症じゃないんすか?」 「コレね、切ったんよ、十年くらい前。 酔っ払ってガラス戸に頭から突っ込んで」 「は? でもそんなキレイな円形ハゲになるんすか?」 「頭皮と頭蓋骨との間に、ガラス破片が横からスパーンとキレイに入ったみたいでね~。 頭皮だけが剥がれて、一ヶ所だけ繋がって残って、蝶番みたいにパコパコしちょったんて。 救急隊員が言うちょった」 パコパコ……って、ホラーだ、充分ホラーだよ! 「二時間ぐらいで自分で目ぇ覚まして救急車呼んだんじゃけど、半径五十センチは血の海じゃったけぇね~。 いや~頸動脈とかじゃのうて良かったっちゃ。 頸動脈じゃったら、二時間後にはとっくにお陀仏じゃもんね~」 かずさんはまたカラカラと笑う。 が、俺達は、次第に薄ら寒くなってきていた。 林はすでに顔から血の気が引いている。 「パコパコしちょったトコをね、切れ残った一ヶ所から、ぐるーっと馬蹄形に十一針も縫うたけぇ、丸うに痕が残ってねぇ。 パコパコはくっついたけど、さすがに髪は再生せんかったね~。 見事にパコパコじゃったけぇね~、ぎゃははは!」 笑い事なのかそれは!? まかり間違えば死んでたかもしれんのに、その超お気楽さはどこから来るんだ? 「いや、やっぱり髪生えんかったんは酒のせいかな~。 抜糸が済んでも一ヶ月は酒を控えろ、っちゅーて医者が言うけぇ、 『そんなに耐えられん、一日どんくらいまでなら飲んでもええか』 って食い下がって、ついに 『一日一杯なら』って言わせたんちゃ」 どんだけ楽天家だ! 信じられん。命知らずすぎる。 世の中の大人の女は、こうなのか? みんなこんななのか!? 違うよな? 誰か違うと言ってくれ!!
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