18人が本棚に入れています
本棚に追加
かずさんが目を丸くして俺達を見る。
いや、さっき正々堂々と晒した上に、俺達の目の前でイジってたじゃないか。
とは言えない。
「コレのことじゃろ、円形脱毛症、って」
かずさんは、さっきの五百円ハゲに再び触れながら、クスクス笑った。
え、そこで笑うの?
「そうか、円形脱毛症に見えるんかぁ、コレ。
周りはみんな顛末を知っちょるけぇ、見ても呆れた顔しかせんけど」
「……円形脱毛症じゃないんすか?」
「コレね、切ったんよ、十年くらい前。
酔っ払ってガラス戸に頭から突っ込んで」
「は? でもそんなキレイな円形ハゲになるんすか?」
「頭皮と頭蓋骨との間に、ガラス破片が横からスパーンとキレイに入ったみたいでね~。
頭皮だけが剥がれて、一ヶ所だけ繋がって残って、蝶番みたいにパコパコしちょったんて。
救急隊員が言うちょった」
パコパコ……って、ホラーだ、充分ホラーだよ!
「二時間ぐらいで自分で目ぇ覚まして救急車呼んだんじゃけど、半径五十センチは血の海じゃったけぇね~。
いや~頸動脈とかじゃのうて良かったっちゃ。
頸動脈じゃったら、二時間後にはとっくにお陀仏じゃもんね~」
かずさんはまたカラカラと笑う。
が、俺達は、次第に薄ら寒くなってきていた。
林はすでに顔から血の気が引いている。
「パコパコしちょったトコをね、切れ残った一ヶ所から、ぐるーっと馬蹄形に十一針も縫うたけぇ、丸うに痕が残ってねぇ。
パコパコはくっついたけど、さすがに髪は再生せんかったね~。
見事にパコパコじゃったけぇね~、ぎゃははは!」
笑い事なのかそれは!?
まかり間違えば死んでたかもしれんのに、その超お気楽さはどこから来るんだ?
「いや、やっぱり髪生えんかったんは酒のせいかな~。
抜糸が済んでも一ヶ月は酒を控えろ、っちゅーて医者が言うけぇ、
『そんなに耐えられん、一日どんくらいまでなら飲んでもええか』
って食い下がって、ついに
『一日一杯なら』って言わせたんちゃ」
どんだけ楽天家だ!
信じられん。命知らずすぎる。
世の中の大人の女は、こうなのか?
みんなこんななのか!?
違うよな?
誰か違うと言ってくれ!!
最初のコメントを投稿しよう!