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身体を蝕む甘い刺激。
重ね合う手にかける力が自然と強まる。
押し寄せる快楽に酔いしれ、春を舞う蝶のようにふわふわと浮かび、愛らしいさえずりを零していく。
全て飲み込んだ蕾から花蜜がとろりとしたたり落ち、シーツに広がる染みを目立たせていく。
動きを止めたことでいささかの余裕が出てきたのだろう。
ティルアは熱病にうなされる時のような潤んだ瞳ですぐそこにある顔を見上げた。
「んっ……アスティス……っ」
握っていた手を離したティルアは、小さな両手でゆっくりと彼の頬を包み込んだ。
耳にかけていた金の髪が数束さらりと流れる。深い海の色を醸したインディゴブルーの瞳が柔らかに緩んだ。
アスティスは頬の端を赤らめ、彼の薄く開いた唇が静かに愛らしいそれを這う。
喉から込み上げる言葉を飲み込むような激しいキスは奥に眠る理性の砦に攻め込んでいく。
休んでいたものが柔らかな肉を擦った。すぐにも世界に水の音が広がる。
人魚のように身体を跳ねさせながら、極上の罠に身体を沈み込ませていく。
震える身体に覚える愛熱――空いた両手を熱く汗ばんだアスティスの背に回し、ティルアは愛に溺れ、掠れた声を幾つも上げる。
押し寄せる悦楽に合わせ、ティルアの身体が小刻みに震えを起こす。
揺れ動くベッドが立てる波が何度も何度も奥を責め立て――
「ふぁあ……、あぁっ!」
頂点に達したティルアは身体をびくびくと大きく痙攣させた。
* * * *
栗の髪を優しく撫でる手。
くてんと投げ出した身体に掛けられるタオルケット。
窓枠をくり抜いた月光がベッドに射し込み、二人を癒すように優しく降り注いでいく。
「ティルアと一緒に過ごすようになってからもう1ヵ月か、あっという間だね」
「えへへ、思えば私がアスティスを好きだって気付いてからはあっという間だったもんね」
出逢いは3年前。
そのたった1日の逢瀬が全てを変えた。
ベッドに並んで寝そべる二人の手がどちらもなく重ねられる。
「そういえば色々立て込んでいて、新婚旅行がまだだったね」
「新婚旅行……?」
「そう、新婚旅行、……二人で」
アスティスの言葉に、ティルアの緋色の瞳がキラキラと輝いた。
というわけで、次回から新婚旅行編に入ります。
栞を挟んで待っていて下さった読者様、放置しまくってごめんなさい。
のんびり更新します(;A´▽`A
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