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美加はようやく、初めて信長公を拝顔した。
美加はいまだにその胸の高鳴りを
どう抑制したらよいかを知らなかった。
酒宴に呼ばれ、幾度か信長公に酌をしたら、
あっさりと側室のもとにお渡りになった。
ーーーそう、私は物珍しげに、
隣に侍らせられた女。
主が側室の元へお渡りになった後も、
いまだに武将たちは
酒宴を続けている。
その笛の音、男たちの大騒ぎの音を聞きながら、
この戦国に来てからの日々を美加は思い返した。
安土城内の一室に与えられた、美加の部屋で。
決して広くない、かといって狭くない。
過度の調度品もなく、
必要最低限のものしか置かれていない部屋。
ここが、森家の養女、美加の部屋。
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