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「あの…ここはどこですか?」
おそるおそる美加が聞くと、
ため息をついてさくらは、
「天下の名城、安土城ですよ。」
と桶をさっさと取り上げられた。
美加は叫びたいほど驚いたが、
自分で自分の口をふさいだ。
そう、ここは美加のいた時代では存在しない安土城。
本能寺の変の後、焼失してしまった、
幻の名城、安土城。
混乱する心を抑えようとしたが、心臓の音は大きくなるばかりだ。
「あの・・・今は何年ですか?」
美加はおそるおそる口にした。
「天正九年の夏ですが・・・。」
さくらはあきれ顔で答えた。
さくらは、年の頃、十四、五だろうか。
よく見ると、小さな顔に、すこし大きめの目、上品な口、かわいい顔に見えてきた。
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