さかずきを賜る姫

10/16
前へ
/33ページ
次へ
空気がとまったような緊張が広間を覆う。 蘭丸が口火を切った。 「我が妹姫はうれしさのあまり、 声がでない模様ゆえ、蘭丸めが盃を頂戴しとうございます。」 「よかろう。」 機嫌もそのままに、蘭丸に盃を信長公が差し出す。 美加はほっと、胸をなでおろした。 また、突然に信長公がむくっと立ち上がる。 「皆の者、あとは楽しめ。 おつねのところにいくと伝えよ。」 ”おつねーーー 知らないーーー 史実に残っていない側女の一人だろうーーー” 美加は自分の胸がうずくように痛いことを知った。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加