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「それで城にあがって以来、
愛想よくにこにこと鳥の奏でるような声を発して、
過ごしておりましたら、
ある晩、私の部屋に勝手にどなたかが忍び込んで参りました。
声をあげようにも、口をふさがれて。
口惜しいこと。
それに兄上のいった言葉を信じた私が甘かったのです。
結局、その方がどなたかはわかりません。
城内のどなたかのお手つきになっても、
良いことなど何もありませんでした。」
涙を拭きながら、ひとつひとつ言葉を押し出すようにさくらが話した。
「だから、さくらは愛想なくふるまっているのね。」
「そうです。殿方に興味を抱かれぬようにーーー」
と口惜しそうにさくらは言った。
身分の低い女の立場など、この時代には取るに足らないものーーー
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