631人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
黒髪を握ったまま、頬を染めた美加を見つめたまま、信長公は言った。
「あとで執務室に参れ。
山ほど届いた年賀の書状を読まねばならぬゆえ」
意味がわからず、
「ですから、わたくしは読めませぬ…」
と美加が答えると、お鍋の方様が代わりに美加に教えてくれた。
「おほほ。
字が読めぬからですよーー
お館様は、まつりごとに、女が口だしすることを嫌います。
字が読めぬあなたなら、つまらぬ書状を読むのにそばに置いていても、読めぬなら問題なし。
つまらぬ書状よみも美加姫がそばにいれば、少しははかどるというものです。
そうですね、お館様。
あー、わたくしも字が読めぬならよかったのに。
おほほ」
「心にもないことを言うな。
そなたが字が読めぬなら、奥向きのことをそなたに任せられないであろうに。」
最初のコメントを投稿しよう!