執務室に呼ばれる姫

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黒髪を握ったまま、頬を染めた美加を見つめたまま、信長公は言った。 「あとで執務室に参れ。 山ほど届いた年賀の書状を読まねばならぬゆえ」 意味がわからず、 「ですから、わたくしは読めませぬ…」 と美加が答えると、お鍋の方様が代わりに美加に教えてくれた。 「おほほ。 字が読めぬからですよーー お館様は、まつりごとに、女が口だしすることを嫌います。 字が読めぬあなたなら、つまらぬ書状を読むのにそばに置いていても、読めぬなら問題なし。 つまらぬ書状よみも美加姫がそばにいれば、少しははかどるというものです。 そうですね、お館様。 あー、わたくしも字が読めぬならよかったのに。 おほほ」 「心にもないことを言うな。 そなたが字が読めぬなら、奥向きのことをそなたに任せられないであろうに。」
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