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吉乃様がお亡くなりになったとき、
信長公は人目をはばからずに三日三晩泣いたという逸話も残っている。
吉乃様は、父斎藤道三亡き後はほとんど表に出ず存在すら忘れられていた帰蝶姫に代わり、
織田の正室のように、奥向きのすべてを担ったという。
城内の者も帰蝶姫のことは忘れてしまったのか、
吉乃様を大変慕ったという。
美加は思った。
もし、帰蝶姫が亡くなられた後も
本当は信長公は三日三晩人目をはばからずに
泣きたかったのかもしれない。
しかし、その死に方が自害であったため、
美濃にようやく勝利し活気に湧く織田家中の熱を冷ますわけにも行かず、
お一人で悲しまれたのだろう。
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