天下人を試す姫

13/13
1202人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
美加は信長公の手をとると、静かに立ち上がりそのまま手を引かれながら、どんどへと向かった。 繋いだ手から、半歩先を歩く信長公の熱い気が流れ込んでくる錯覚になり、美加は自分から言い出したことなのに、ふいに手を引っ込めようとしてしまった。 その美加の手を一瞬ぎゅっと強く握り、引っ込めることを信長公が許さなかった。 「そなたが言い出したことであろう。 しかし、城内で手をひいたやっているのに顔も染めぬのであれば、そなたの心変わりを疑ってやろうと思ったがな。」 握った手をそのままに、美加を振り返った信長公の顔は、先日見た五十の顔ではなく青年の顔つきであった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!