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何人かとすれ違った。
特に問いただす者もおらず、信長公の寝所の前まで辿り着いた。
しかし信長公の寝所の前には、松千代をはじめ数人の小姓らが控えていた。
この襖一枚の向こうに信長公がいるというのに…。
「美加姫様、なにごとにございますか?」
松千代が心底驚いた様子で美加に尋ねた。
「いえ…。あの…。
お館様にお会いすることは叶いませんでしょうか?」
「本日、お館様は美加姫様をお呼びしたとは伺っておりません。
どうぞ、ご自分のお部屋へとお戻りくださいませ。」
ピシッとした口調で拒否され、取り次いでもらうこともできなかった。
「申し訳ございませんでした…。」
美加は踵を返し、信長公の寝所の前から去ろうとするが、足が動かない。
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