天下人の寵姫 第13話 いけにえと姫

琵琶湖を越える姫

「自分から予の寝所を訪れたなど、蘭丸が知れば、また叱られるぞ。」

寝具から半身起こした信長公は至極優しい声色で、まだ寝所の入り口に一歩足を踏み入れただけの美加に話しかけた。

松千代が静かに襖を閉め、寝所には二人きりになった。

美加は、信長公の気遣いに嫌われているわけではないと思い至り、小走りで信長公の胸に飛び込んだ。