うちひしがれる姫

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少し腹のふくらんだ美加の侍女、さくらが迎える。 どのような調子かと信長公が尋ねたならば、 「おとなしくされております。 ただ少し、心が病まれているかと。」 と、とても心配そうに告げた。 それもそうであろう、もともと意思の強い女であったが、戦国の世での生活は短い。 生まれつきの戦国の女である、茶々や市に比べると心の弱い女であろう、と 信長公はおもった。 ただ、あのときの自分には、美加を殺すこともできず、ああするしか他に道はなかった、と信長公は自分に言い聞かせた。
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