配管工

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 わたしはその輪へ近寄っていきました。すると、そのCDは一枚ではないことがわかりました。まるでラックに立てているみたいにして、奥まで沢山並んでいるんです。でも溝自体は二十センチ程度のものでしたし、わたしはとりあえず渡っていくことにしました。やっぱり気味は悪いので、タイミングを見計らい、輪がちょうど反対へ行った時に飛び移ろう、と。  そして、自分でリズムを取り、絶対に当たらないだろうタイミングで飛び込みました。でも、です。  あれがきっと光速ってことなんですね。もの凄いスピードで輪が帰ってきちゃったんです。わたし、もうびっくりしちゃって、全然駄目、避けられませんでした。すると鍛えた右手が、離れていきました。踏ん張ろうとしましたが、それも駄目です、その時にはわたしの左足も離れて、溝の奥へ転がっていくところでした。当然わたしは転倒してしまい、そこは溝を挟んでいます。そして、ちょっと馬鹿にしてるくらいゆったりとしたスピードで、輪が、やってきました。  ふふ、お察しの通りです。わたしはやっぱりそこでも死にました。目が覚めるともう真っ暗、懐かしの鉄棒地獄へ逆戻りです。えっ、コウメイ? コウメイって誰ですか? あ、はい、続けます。  わたしはすぐさま手を離し、落下します。板がなかったらやだなあとは思ったのですが、幸せなことにちゃんと板はありました。わたしはそれを掴み、ふふ、倒立です。それでまた光の輪に行ったのですが、はい、やっぱり全然駄目! 何百回もわたしはバラバラになりました。本当にいやになりそうで……。  そのうちに正攻法では無理と気づき、わたしは途中の通路で足を主に鍛えながらずっと何十時間も、あ、感覚です。考えていました。はい、そうです。お腹空きませんし眠気もありません。そういったところは夢とよく似ていますね。  色々と試してもいて、するとです、ある時わたしは、その輪の外周はアウトなんですが、中は触れてもなんともないことに気づきました、ええ、それどころか、その輪は押せるんです。わたしはとりあえずその輪を押してみました。輪はすぐに動いて、それが次の輪へ。はい、まるでアメリカンクラッカーのようにそれは当たり続け、わたしは手をぎゅっと握って、勝利を確信しました。
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