配管工

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 にこやかに溝を飛んで、……ううん、でもどうしても駄目なんです。その光輪が、今度は縦に走ってきたんです。まるで通路自体を溝のようにして。多分、ズルしたから怒ったんです。スピードはさほどでもないのですが、数がとにかく多くて、側面を叩けば通路の脇に寄るのですが、わたしはとても捌ききれません。それでも何度も死にました。  でも、再三言うようですが、慣れって本当に怖いものです。わたしは光輪を押して、その時も挑んでいました。両手で叩き、その頃には両足も自由自在でした。頭を越えるハイキックだって悠々です。回し蹴りだって鋭いんです。そんなこんなでわたしは一人息巻いて、縦横無尽に暴れまわっていました。ひとつふたつみっつ、と数えて十、二十、三十……、延々と繰り返しました。  そしてそれは、……ちょっと数はわからないのですが、六百も中頃だったかと思います。それは間違いなく自分の新記録で、でももう疲れきっていました。でも、わたしが次を叩こうとしても、来ないんです。その光輪は両脇を相変わらずシャーン、シャーンと言わせながら走っていますが、目掛けてくるものはどこにもありません。通路はその六百強の光輪が横を走っている所為で随分細くなっていましたが、輝いているのでそれはそれは綺麗な光の道が出来ていました。  そうしてわたしは、ようやくその光輪地獄も終わったことを悟ったんです。 (陽子はそこで一旦切り、やはりオレンジジュースを含む。時刻はいつか三時を過ぎており、久下は一度席を外して一階の売店へ行き、女の子の好きそうな菓子?――チョコレートやチョコクッキーやチョコレートチップスを買った。一服をして戻り、それを二人で談笑をしながら仲良く食べた。久下はもう一度喫煙の為に席を立つことを断ったが、陽子はここで吸っていいと言い、母親か姉のものと思しき灰皿を差し出した。久下は窓際に立って見上げながら吐き、灰皿で丹念に消した時にはなしの続きが始まる。) 〈3〉  うん、それはなんだか最後を彩るような、荘厳な光景でした。わたしは溝にだけはまらないように注意しながら、誇らしげにその中央を歩いていきました。道は真っ直ぐに伸びていて、先にはどこかへ繋がる入り口が見えていました。
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