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ある時僕が家でまったり扇風機の風を口に入れていると、友達の彼女から電話が掛かってきた。
『今家にいるんだけど、押し込み強盗が入って来たの。助けて』
それは非常に困ったことだ。
「あいつはどうしたの?」と一緒に住んでいる筈の友人のことを訊ねてみた。
『ああ、うん。それがね、そう。出張に行ってるの。後ひと月は帰ってこないわ』
「ふーん。でも僕を呼ぶより警察に頼んだ方がいいよ? そっちの方がずっと役に立つし……」
『警察はクソよ』と彼女は遮るように吐き捨てた。そしてクソならば仕方がない。僕は渋々了承し、早速真夏の日差しのもと、車で彼女の住んでいるマンションへと向かった。
普通のどこにでもありそうな、六階建てのマンションだった。四階に上がりインターホンを押すと、果たして彼女はすぐに出た。そして颯爽と僕の首に手を回し、背伸びをしながら抱きついた。
「怖かったわ」と彼女は言った。彼女の首筋からはお風呂上がりのいい香りがした。けれど、それは何も彼女だけじゃない。女の子はみんないい匂いをさせている。何故女の子はみんないい匂いをさせているのだろう? 僕がそんなことを考えていると、「押し込み強盗はこっちよ」と、彼女が僕をリビングまで引っ張っていった。
押し込み強盗は、のんびりとソファーに座っていた。しかも二人いて、それには僕もちょっと驚いた。てっきり僕は一人だと勘違いしていたのだ。もっとも二人はとても弱そうな体つきをしていた。一人はすぐに貧血になりそうなやせっぽちで、一人は動くのもつらそうなふとっちょだった。これならもし手荒なことになっても、勝てるかもしれない。僕がそんな望まない未来を考えていると、やせっぽちの方が「やあ。まあ座りなよ」と声を掛けた。嫌々ながらテーブル越しに座ったら、彼女がどこからか冷たい緑茶を持ってきて僕の前に置いた。僕は緑茶をひと息で飲み干した。
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