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「とは言いましてもね、実際僕達は押し込み強盗に捕まってるんですよ? これは事件ではありませんか?」
『僕達? はいはい、妄想はやめて偶には外に出てみなさい。今日は凄くいい天気ですよ。もし事件に巻き込まれたのなら、殺されてから通報下さい。ほら、すぐ参りますから。別の部署ですけ……』
僕はそこで一方的に電話を切った。全く、頭に来る。
「どう?」
彼女が即座に訊ねてき、「クソだ」と僕は短く切った。すると、彼女が嬉々として僕の肩に頬摺りをした。
ところで、彼らがちょっと前から可哀想な程うなだれている。どうやら僕と警察官の会話を聞いたらしい。彼らはどうにも成功を信じて疑わなかったようなのだ。しかし冷静に考えてみれば、土台無茶な話だった。大体そういうのって警察ではなく親族に頼むものではないのだろうか? もっとも僕はその件について何も突っ込んだ話をしなかった。僕はその時分になると流石に彼らの頭がおかしいことに気づいていた。そして何とかに刃物という言葉のある以上、藪から蛇を引っ張り出す理由はない。そうした訳で僕が彼らの動向を遠慮がちに伺っていると、とうとうふとっちょがネバネバした言語を発した。
「どうするよう……兄者」
「「兄者!?」」
僕と彼女は同時に発し、即座に顔を見合わせた。彼女は一人くすくすと笑った。そして僕の頬を押し込むように二度ばかりつついた。
「そうだな、どうしようか、弟よ」
兄者と呼ばれたやせっぽちが、無限の思索に遠い目をした。しかし彼らは本当に兄弟なのだろうか? 待て。コードネームという可能性も否定できない。何より、ここまで似ていない兄弟などこの世に存在してはならないのだ。何故だかそんな気がするのだ。
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