押し込み強盗

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「しかし実入りが0と言うのは我々の主義に……」 「しかし一体どうすれば……」 「光明は余りに繊弱な……」 「しかし、或いはしかし……」  そんな僕の疑問などお構いなしといった風に、彼らがいつか討論をしはじめた、が、全く内容がわからず、僕達は当然暇になる。仕方がないので彼女から手相を見てもらっていると、急にふとっちょが豚みたいな声を出した。 「あ、兄者……!」  やせっぽちが耳を貸すと、ふとっちょが手をメガホンにして何やらこそこそと言う。ところがふとっちょの視線は、ずっと彼女を離れなかった。内緒話を聞いていたやせっぽちも、やがて下卑た視線を彼女へと送ったかと思うと、舌なめずりをしながら数度頷いた。 「なによ」と彼女は言って僕の腕を抱きしめた、が、僕はすぐに彼らの考えていることがわかってしまい戦慄とした。  彼らはきっと、これから彼女にいやらしいことをしようと思いついたのだ。そしてそれは当然だった。何せ彼女はとても可愛く、おまけにスタイルも抜群であり――先程から度々当たっているので知っているのだが――殊に胸なんてはちきれんばかりで、だのにマシュマロよりも柔らかいのだ。  果たして彼らはゆっくりと立ち上がり、さて、困ったことになったぞと僕は思った。きっと彼女はこれからリスクに伴う報酬としてレイプされるに違いない。そして僕はどう考えても彼女を助けなければいけない立場にある。しかし刃物は怖い。刃物はやっぱり怖すぎる。彼女もそこで気付いたのか、僕の腕をぎゅっとして首を振った。 「いや……。やめて……! 近寄らないで……!」
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