第1章 クリスマスマジック

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駅前はいつにも増して賑わっている。 手をつないで歩くカップル、嬉しそうにおもちゃを抱えている子どもと母親、ケーキを手に家路を急ぐサラリーマン。 そう今日は12月25日……クリスマスだ。 そんな楽しそうな人たちを、手すりにもたれ、上から眺めている。 俺は真田 森司(サナダ シンジ)、現在、高校2年生。 高校生活の一番楽しい時期である。 しかし、彼女はいない……一度も、つまり彼女いない歴=年齢というわけだ。 友達はバイトで1人、ここにいる。 何とも悲しい現実。 目を瞑りたくなる…… そんな現実逃避という最終手段しかない。 「ねぇ、みて見て! 雪だよ!」 後ろから聞こえる声に振り向くと、窓の外に白い粒が見えた。 まばらだったが、次第に強くなってきている。 『今日は初雪が降るかもしれませんね』 と天気予報のお姉さんが話していたのを思い出した。 ホワイトクリスマスという単語が飛び交っている。 だが、俺は嬉しくない。 「……先輩、こんなところで何してるんですか?」 「外を眺めてる」 「クリスマスなのに寂しい人ですね」 「うるさい。ほっとけ」 ――あれ、俺は誰と会話しているんだ? ――後輩なんていたっけ? 少なくとも高校では部活に入ってないのでない。 声の主を探してみる。 いつの間にか隣にいたのは、見知らぬ制服を着た女の子だった。
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