第1章 クリスマスマジック

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「見覚えあるような……ないような……」 「忘れちゃったんですか?」 「微妙なんだよな」 「久瀬 白雪ですよ。思い出しましたか?」 久瀬 白雪(クゼ シラユキ)、その名前を聞いた瞬間、頭が鈍い痛みに襲われた。 けれども、すぐに治まった。 「確かにいたな。いつも勉強教えてくださいと言ってくる、馬鹿が」 「ちょっと馬鹿はひどすぎですよ。訂正してください!」 「それなら勉強できるようになったか?」 「……多少は……」 「それならダメだな。出直してこい」 「ってぇ、久しぶりの再会でこんな会話したくないです!」 「しょうがない、馬鹿な久瀬が悪いんだ」 「相変わらずひどいですね」 「そんなことより、お前も悲しい人か?」 「スルーしましたね。まぁ、いいですけど。そうなりますね、先輩と一緒です」 足元には黒いスクールバックが置いてある。どうやら帰り道のようだ。 「今、帰ると確実に雪まみれだぞ」 「そうですね、傘忘れちゃいました。まさか先輩も?」 「ああ、そうだ」 そう、雪が降る前に変えればよかったのだ。俺の足元にもスクールバックが置いてある。 今日は暇つぶしの人間観察が凶と出た。 「私は雪が名前に入っているので大丈夫です!」 「何だよ、その根拠のないこと」 「なんとなくです」 「馬鹿というよりは天然なのか」 「それってランクアップですか?」 「いや、変わらずってとこだ」 「それは残念です」 「どうする? いま、雪小降りになってきたけど」 「私は迎えに来てもらうので大丈夫です」 「最初から言えよ、大事なことは」 「だって少しでも、長く先輩と話してたかったですもん」 なんだ、何だこの雰囲気、まるで告白しますって感じは!? 久瀬は両手を胸の前で重ね、握っている。 俺の勘違いなのか。
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