2.美麗男。

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「レイちゃんね。レイちゃんはこーいうお店、初めて?」 「は、はぁ…」 この年になって”ちゃん”付けされて少し怯む。 別に差別や偏見を持ってるわけじゃないけど、今まで生きてきて遭遇した事のない人種に戸惑いもある。 「ここだけの話なんだけどねー、美麗さんはオカマじゃないんだよ(笑)」 カオはいつの間にか頼んでいたファジーネーブルを飲みながら私に言う。 私の前には生ビール。 カオが注文したに違いない。 「…そうなの?」 とりあえずノドがカラカラになってきたのでビールで潤そう… 「あ、私フライングしちゃってた!乾杯しよっか!」 グラスを持ち上げた私を見てカオがいたずらっぽく笑って言う。 このテーブルには今、ママと美麗さんと私とカオしかいない。 「もうちょっと時間が経てば人も増えるんだけどね。今日は人の入りが悪いから呼び込みに出てるのよ」 ママが野太い声で説明してくれる。 「え、呼び込みとかって怒られないですか?」 「呼び込みと悟られないように呼び込むのよ~。カオちゃんのお友達との出会いに乾杯☆」 ママが強引に音頭を取って乾杯となる。 「あ…ソウデスカ」 カチン、とグラスが重なる音を聞きながらどう反応していいのか困る。
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