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 黒い目だし帽をかぶった男に手を伸ばす。身体(からだ)はボディアーマーで守られているので、テルの銃弾は首筋に集中していた。射入口がいくつも空(あ)いている。タツオは嫌悪感を感じながらも死体から目をそらせなかった。テルはうつ伏せに横たわる死体の頭をあげた。顔を確認する。衝撃でそのまま固まってしまった。 「……こいつは」  タツオも敵狙撃手の顔をしっかりと見た。テルの言葉を失うほどの衝撃も無理はなかった。そこに発見したのは、東島進駐官養成高校の同級生の顔である。タツオは絞りだすようにいった。 「……浦上(うらかみ)くん」  浦上幸彦(ゆきひこ)は東園寺崋山(とうえんじかざん)の班の生徒だった。長身で運動神経もよく、いつも控え目な男子生徒だった。カザンの無理な命令にも文句ひとついわずに従っていた。気のいい男だ。
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