第1話 罪深き人

2/38
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
7月某日 私はいつものように晴美がいる家への道を歩いていた。古い形ではあるがそれなりに気に入っている木造建築の家だ 目立ちもしないが浮いてもいない。そんな謙虚な家。別段客を呼ぶこともない私にとって我が家というものはとても素晴らしいものであった 晴美は私の妻だ。今流行りの歳の差結婚というべきか、晴美は私の年齢と14も違う。私が35で晴美が21だ そんな私は変わった趣味のようなものがある。それは、何でもビデオカメラで撮って記録しておきたいという、自分でも少し不思議に思うようなおかしなものだ 晴美も最初は動揺していたが付き合い始めて少し経つと私に合わせてくれた。ほんとにいい人を見つけたと思っている 私は晴美を撮り続けた。何分も何十分も何時間も 気づけばビデオカメラのファイルは晴美で埋まっていた。だが私はそれがとても快感だった。晴美が家にいないとき、年甲斐もなくさみしくなる その時に動画を再生すると、まるでそこに晴美がいるように錯覚できた。私は晴美を心から愛していた そして晴美も私を愛してくれていた。私は、満足そのものだった。仕事も、人間関係も、何もかもうまくいっていた あの日までは・・・
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!