第1話 罪深き人

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「それは・・・結婚詐欺かもしれませんね・・・」 駆け込んだ警察署で私はそう言われた。いともあっさり、心の中をえぐられた感覚だった 私だってその可能性を懸念してないわけではなかった。むしろ考えないように押し殺していた 晴美は私には不釣り合いな女性だった。私には手に余るほど魅力的で、考えてみれば結婚詐欺というのも頷けた でも、そんなこと信じれるわけがない。確かに家の金品はなくなっていた。へそくり貯金。ブランド物の時計。その他さまざまな高級品や現金が消えていた それでも、何より私は晴美がいなくなったことに対するショックの方が何十倍も大きかった。家の金品など晴美が消えたことに比べれば微々たる問題 「しかしですね。あまり軽率に考えない方がいいですよ。こういうのは案外ひょっこり帰ってきたりするものです。まずは家でしばらく待ってみては?もし帰ってきたのなら空き巣の線で警察も動きますから」 私はその言葉を素直に聞き入れ家に帰った。家に帰った時の時刻はもう出勤時間をオーバーしていた。私は大手企業の事務についている それなりの収入でお金に困っていることはなかった。銀行にも幾ばくか預けてある。お金は別にかまわなかった。しかし晴美は、愛する妻は・・・ 私はマイナスな考えに歯止めを撃ち会社へ電話をかけてその日を休むことにした。とても会社に行ってPCの前で座り続ける気力は残っていなかった
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