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「ああ。この女性?見たことあるある。確かエリーゼって店で働いてる娘だよ」
私はその場にただ立ち尽くした。自分が音のない世界に入り込んだかのように周りの音が聞こえなかった
あまりに唐突。急すぎる吉報。私の意識は朦朧としていた。熱中症にでもなったかもしれない、それほどまでに私の意識は虚ろだった
「あ、あの大丈夫ですか?」
目の前のサラリーマン風の男は心配そうにこちらを見た。私は何かに取りつかれたようにその男の手を握った
「ありがとう・・・!本当に・・・ありがとう・・・・・っ」
私は涙をこらえながら必死に感謝の状を述べた。サラリーマン風の男は照れ臭そうにその七三分けの頭を掻いた後
「そ、そうかい?エリーゼはあっちの方にあるから、その人になら夜行けば会えると思うよ・・・」
と、そう言った
私はもう一度深々と頭を下げそのエリーゼという店へと走った。私は舞い上がっていた。これほどまでに嬉しいことはない
また晴美に会えるのだから。また晴美を撮れるのだから。私は走りながらギュッとビデオカメラを握りしめた
私は息を切らせながらエリーゼという看板がある店の目の前に来た。店の看板には『夜8時から深夜1時まで開店』と書かれていた
私は店を見上げた。鮮やかピンクの装飾。これでもかというほどのドライフラワーやリボンの可愛い飾りが施されていた
これは誰がどう見ても
キャバクラだった――――――
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