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そんな具合に真剣味のない生徒たちだったが、なんとか山に送り出し、ぷんぷん丸は一度学校へ戻った。
生徒たちの様子はまた夕方にでも見に行くことにして、とりあえず職員室に戻ると机に向かった。野戦術の実習が終わったらテストをしてやらねばならない。問題を考えながら筆を用意していたぷんぷん丸だったがふと顔を上げた。
クロネコヤマトの宅配車が校門をくぐって入ってきたのに気づいたからだ。
(昭和十六年に宅配車なんて以下略)
「こんにちは~印鑑かサインお願いしま~す。」
クロネコヤマトのドライバーは貼り付けたような笑顔でいくつかの荷物を職員室に運び込むとすぐに去って行った。
ぷんぷん丸は荷物の宛名を見ながら箱を一つ一つ確認した。
「ぷんぷん……これはコピー用紙で……。これは……二年生が使う実験セットだぷん……。ん?これは……?」
ぷんぷん丸の手が止まった。
「これはもしや、もしやこれは、いや、まさかこれは、ひょっとしたらこれは、いや、もしかしたら、あるいはおそらくもしくは、きっとこれはっ!!!!」
ぷんぷん丸は宅配された一冊の本を手に取り立ち上がった。
表紙には「無銘祭祀書」と書いてあり、中身は横書き、ドイツ語である。
「こうしちゃいられないぷんぷんっ!!すぐにドイツ語講座担当のムカ着火ファイアー先生に知らせなければっ!!!!」
ぷんぷん丸は野戦術の実習のことなどすっかり忘れて廊下を走り出した。
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