殺し屋

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それから十年後・・・ 「オヤジ、 この前若頭が正月組の鉄砲玉に殺られたばかり、充分気をつけてくだせえ。」 「だからこれだけの若けえモンにハジキ(拳銃)やドス(短刀)持たせてるんじゃねえか心配するな。」 オヤジと呼ばれた中年男は父親ではなく指定暴力団 大晦日組の組長であり、 警告したグラサン姿の壮年のヤクザや 下っ端のチンピラ達は全員武装して、 黒ベンツから降りる組長を護衛していた。 物々しく近寄り難い彼等、 しかし雄叫びをあげながらつっこんで来る男が一人。 「うおぉりゃあぁあ!!」 「てめぇは若頭を殺した鉄砲玉!撃て撃てぇ!!」 バキュウゥゥウン! バキュウゥゥウン! バキュウゥゥウン! 下っ端達が撃つ拳銃は旧ソ連が1930年代開発したトカレフを中国がコピーしたノーリンコ(黒星) 壊れ易い粗悪品だが 警察が着る防弾チョッキ程度ならブチ抜く威力の 小口径で弾薬が多い30モーゼル弾が撃てるため 抗争用の使い捨て拳銃としてヤクザ達が大量に密輸したものだ。 しかしそれ故に反動が強く、 そのうえ鉄砲玉と呼ばれる殺し屋の巨体に似合わぬ動きが素早くてまったく当たらないのだ。
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