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「バロン様!私の娘はなんとか助かったが、
医者が言うには明日までの命と!!!」
『そんな馬鹿な!?』
「馬鹿はお前だ!大飯食いの役立たずめ!!」
「そうだそうだ!俺の家族を返せ!!」
「弁償しろ!!」
「てかお前が来てからランダ現れたじゃねえか!!」
『そ!そんなあ!!!』
今までの崇拝から手の平を返す様にバロンを非難するチャロナラン村民。
―その日以来、
バロンへの参拝者はいなくなり、
奉納のライスもなくなった。
守護が出来ない守護神にかまうよりも、
村人達は失った多くの物を悲しみ、
復興に頭が一杯になってしまった。
人々の愛や感謝を糧にしていたバロンの元気は無くなっていき、
金色の輝きも鈍っていく。
寺院の庭でうずくまり、
たまに通る村人の罵倒や投石を受ける姿に、
かつての神々しい面影はなくなっていた。
その中でガムラン奏者達は数少ない味方だった。
「元気を出して下さいバロン様、
悪いのは全てランダであって貴方ではありません」
『・・・・・・・』
「そうですよ!皆いきなりの事に気が動転して、
貴方に当たり散らしてしまっているんですよ」
『・・・・・・・』
「まだ練習中ですが、
我々の新曲を聞いて下さい。」
『・・・・・・・こんな俺のためにか?』
音楽を生業としているものの、
騒音と見なされ練習場所に困っていたガムラン奏者達。
同じく疎外されていた彼等が鳴らす竹製ガムランの音色は、
最初より遥かにバロンの心に響いていた。
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