彼女に会いたくて

11/22
前へ
/22ページ
次へ
 部屋の戸を掴んで振り向いた。 「ふんっ…相変わらずだな。年下のくせに生意気」  アカイはニヤリと笑いながら俺を見下ろしている。  アカイは昔から年上だからか知らないが、俺よりも背が大きい。 「そりゃど~も」  玄関でトンットンと靴を履いた。 「褒めてねぇよ。まぁいいわ、また来いよ。荷物あんがとよ」  アカイは煙草を銜えた。  シュッとライターで火を付けると、俺の方を見た。 「…気が向いたらな。じゃ」  わざと意地悪く答え、ポチに跨った。 「…」  アカイは煙草をふかしながら、無言で手を振っている。  俺も手を振り返す。  アイツがわざわざ“聞かないんだな?”と言う場合は大体自慢話ばかりだ。  だから聞かない。  だって羨ましくなるから。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加