彼女に会いたくて

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「あら?今日は早いのね」  食堂で朝食を摂っていると院長さまが顔を出した。  悪い事をしている訳ではないが、少し後ろめたい。 「はい。傘を返しに行こうと思いまして」  ジャガイモをモグモグと食べながら返事をした。  ここら辺の地域での主食はジャガイモだ。  ジャガイモは土が痩せていても沢山採れるし、デンプンが豊富だから主食にもってこいだ。しかもビタミンCも多い。  でも、俺はパンの方が好きだ。 「そうだったわね。では、お弁当急いで作るわね」  そう言うと、重たそうな体で台所へと姿を消した。  わざわざ作ってくれなくても良いのに弁当を作ってくれる。  でも金欠の俺には嬉しい限りだ。  いや、金欠じゃなくても俺だけのために作ってくれるのだから嬉しい。  俺以外の人(シスターも除く)はまだみんな学生だから昼は給食で、弁当はいらないんだ。  俺一人のために弁当を作っているのを見ると、すまなく思うけど、やっぱり嬉しい気持ちの方が強い。俺も誰かに何かをしたくなる。  お礼をちゃんと言いたいのに、中々素直に言えない。いざ言おうとすると、緊張して他の事を言ったりするし、中々難しい。
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