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「お届け物で~す」
玄関を開けて、大きく叫んだ。
これが俺の仕事。要は宅配屋ね。中卒のおれはこう云った肉体労働の仕事にしか就けなかった。
もっとも、当たり前の話しだが、中卒全員が肉大労働に就くわけではない。頭が良かったり、手先が器用だったりすると他の職にも就ける。
けど、俺は体を動かすのは嫌いじゃないし、この職が嫌いではない。
…ただ一つ問題と言うか…何と言うか…接客がちょっと…性に合わない。愛想笑いとか俺がすると不気味な笑顔以外の何者でもない。
「は~い」
家の中から声が返ってきて、見覚えがある人物が出てきた。
「あれ?ゼル?」
どうやら相手も俺の事を覚えてくれていたようだ。
「よっ。これお届け物」
手に思っている箱を差し出した。
「あぁ、ありがと。なぁ、家に誰もいないから遠慮なく上がってけよ」
懐かしきアカイは荷物を受け取ると笑って、家の奥を指した。
「でも、仕事中だし…」
久しぶりだから話したいのは山々だけど…。
「じゃ、運び屋さん、ちゃんと仕事してもらおうかな?」
…ちゃんとしてるよ?
「その荷物あっちの部屋の奥に運んどいて」
アカイは受け取った荷物を俺に渡して、ニンマリと笑った。
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