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「でも、その後しばらく落ち込んで、誰とも話せなかったし、部屋に閉じこもったきりで、学校にも行けませんでした。情けない話ですよね」
僕は先輩が心配しないように、わざと笑って見せる。
あ、ちゃんと笑えているか、ちょっと自信ないな。
そう思った瞬間、机の上で指を組んでいた僕の手に、そっと手が重ねられた。
「え?」
先輩の手が僕の手を優しく包み込むように握っていた。
「もう、いいから……」
同情でも憐憫でもない感情が先輩の瞳の奥に見えた気がした。
「先輩、大丈夫です。もう、昔のことで割り切っているつもりですから」
「……でも、和地くん。顔は笑ってるけど、涙が流れてるよ……」
気がつくと頬に暖かいものが伝っていた。
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