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「和地くん、落ち着いた? そろそろ帰らないと日直の先生が巡視に来ちゃうよ」
負の感情が頭の中をぐるぐる回り、疑心暗鬼にかられている僕に先輩が、注意を促すように声をかけてくれる。
心配そうに、僕へ向ける先輩の優しい笑顔が心に染みる。
その瞬間、僕は自覚した。
やっぱり、僕は真菜香先輩が好きなんだ。
僕がどんなに最低な奴で、先輩にふさわしくなくても。
それは変えられない事実なんだ。
「和地くん?」
「あ、すみません。すぐに帰り支度しますから」
急いで支度を終え、待たせた先輩に顔を向けると、先輩は少し嬉しそうに僕を見つめていた。
「先輩?」
「うん……あ、ごめん」
「どうかしました?」
「ううん、あのね……何かね、和地くんのこと、前より少しだけ理解できたかなって思って……」
先輩の台詞の意図が掴めず、訝しげな表情になったのだろう。
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